一昨年の十二月、小学校二年生の息子が、サンタクロースに手紙を書いていた。
手紙には、「サンタさんへ。ゲームをください。」と、書いてあって、私は、予想通りの息子のプレゼントの要望に、大きく頷いていた。
その時、息子が、私に尋ねた。
「お母さん。お母さんは、サンタさんに何をお願いするの。」
私は、息子の無邪気な問いかけに、思わず、ほほ笑み、答えた。
「お母さんは、大人だから、プレゼントは、もらえないよ。」
すると、息子は、手紙に、「お母さんを子どもにしてください。」と、書き足した。
そして、にっこり笑って、言った。
「これで、お母さんも、サンタさんにプレゼントをもらえるよ。何をお願いするの。」
私は、サンタクロースにお願いするものは、何もないと思った。
心やさしく成長した息子が、かけがえのない何よりのクリスマスプレゼント。
絵本作家のかとうまふみさんより
今回、絵本を作らせていただいた作品は、とてもささやかなお話です。 そのささやかさの中に、本当の喜びを見出したのです。 「本当のこと」って、こんな風に日常の中にさらりとあるものではないでしょうか。 私が出来ることは、なるべくシンプルに、そのままに、仕上げることでした。 森の中の小さなうさぎの家族を描く時間は、とても幸せな時間でした。
原作者 石川楓さんの受賞コメント
家族3人で『プレゼント』を読ませていただきました。あたたかな色彩に、やさしい筆遣い、そして、表情豊かなキャラクター達が織りなす奥深いストーリーに、私の心は、穏やかな慈愛で満たされ、闘病中の夫は、涙ぐんでいました。一方、うさぎの主人公になれた小学4年生の息子は、照れながらも嬉しそうに笑っていて、夫と私は、息子の笑顔を眺めながら、今ある幸せをありがたくかみしめました。かとうまふみ先生、そして、春日井製菓の皆様、私達家族に、絵本だけでなく、幸せな時間をプレゼントしてくださり、ありがとうございました。もし、『プレゼント』の深くてやさしい幸せが、読者の皆様にも届いていたら、私は、幸せです。