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工場を守る活動が、人を育てる。
春日井製菓の保全活動に見た、自律型組織のリアル
広報担当者が工場の保全活動に初挑戦
お菓子づくりの現場では、毎日あたりまえのように機械が動き、商品がつくられています。けれどその「あたりまえ」は、誰かが支えているから成り立つもの。春日井製菓の工場で定期的に行われている「保全活動」は、まさにその土台を守るための営みでした。

一般的に工場における保全活動とは、設備の安定稼働と生産性向上を目的とした取り組みです。ところが春日井製菓では、それが組織と人材を育てる仕組みとして機能していました。

今回広報担当である私が参加したのは、豆菓子の包装ラインにおける保全活動です。春日井製菓の豆菓子といえば、グリーン豆やうすピーナ♪、えびピーナ♪などがあります。特に「ピーナ♪」シリーズは1960年に販売開始し、2026年に66周年を迎えるロングセラー商品です。
包装機械が並ぶ工場の現場に着くと、リーダーのMさんを中心に、朝のミーティングが行われました。そこでは、リーダーが一方的に話すのではなく、メンバーそれぞれが前回の保全活動で得た気づきを「宿題」として持ち帰り、各自が関係部署に問い合わせたうえで、解決した内容を報告していました。しかも、特定の人だけではなく全員が、自分の担当箇所に対してやり切った状態で、次々と報告していきます。

ふと自分の日常を振り返ると、会議を重ねても論点が堂々巡りになることや、同じ議題を繰り返してしまうことがあります。しかし、この現場ではそうした“出戻り”がほとんどなく、一人ひとりが自発的に発言し、行動している姿が印象的でした。
保全活動では、各設備の電源を切り、機械を分解・清掃していきます。

誰かに言われたからやるのではなく、自分たちの手で、自分たちの働く現場を「より良くしていこう」という気概がヒシヒシと感じられ、その思いに圧倒されました。

保全活動中、特に印象的だったのは、作業中の人と人とのコミュニケーションです。現場では、「若手の気づき」がとても大切にされていました。たとえば安全対策の場面では、あえて安全ではない状態の写真をお題にして、気になる点を問いかけます。若手はそれぞれ気づいた点を書き出しますが、答えを知っているはずのベテラン社員は、あえて口を出さず、一歩引いて見守っています。
若手はそれぞれ気づいた点を書き出しますが、答えを知っているはずのベテラン社員は、あえて口を出さず、一歩引いて見守っています。

決してすぐに答えを与えるのではなく、「どう思う?」「なぜそうなっていると思う?」と、まず本人に考えさせる声かけが、何度も自然に行われていました。そこには、単に作業をこなすための指導ではなく、自分で考え、自分で動ける人を育てるという明確な意志がありました。

活動後のミーティングでも、その姿勢は一貫していました。さまざまな工具を一人で扱えるかを記録する「スキルマップ」の話題になった際、リーダーからこんな問いかけがありました。

「今日の保全活動で、チェーンカッターを今後は一人でもできるようになった人?」
すると、5人以上の人が手を挙げ「もう一人でできる」と宣言したのです。一人ひとりが自分の仕事に向き合い、「できること」を着実に増やしている様子が伝わってきました。
また、ベテラン社員の関わり方も印象的でした。MさんやNさんをはじめ、経験豊富な方々は、自分がやれば早く終わる作業であっても決して前に出ません。

若手がまずやってみるのを見守り、試行錯誤を経て、それでも難しい場合にだけ、必要なタイミングでそっと手を差し伸べる。その繰り返しでした。

仕事をただ教えるのではなく、見守り、成長を待つ。そして決して放任ではなく、支える。この絶妙な距離感での関わりが、この活動の質を高めているように感じました。
私はこれまで、ライターとして社員1万人以上のIT系企業を取材し、「ボトムアップ型の自律型組織運営」について繰り返し取材してきました。
トップダウンの指示だけでは人は動かない。現場の一人ひとりが、自ら職場をより良くしていくためには、中間管理職によるコーチング的な関わりと、挑戦を支える文化が必要——。
多くの企業が理想として掲げる組織像が、春日井製菓の工場には、日常の実践として存在していました。
こうして初めて保全活動に参加し、現場のモチベーションの高さに感銘を受けていると、保全活動を統括する責任者の方にお話を伺う機会がありました。

製造業にとって、工場のラインを1日止めることは、決して簡単な判断ではありません。
「20年前からカイゼン・自主保全活動を続けてきましたが、当初は反対意見も多くありました。ラインを止めるよりも、少しでも多く生産したいという声があったんです。それでもこれは経営にとって必要な取り組みだと考え、粘り強く続けてきました。現在の形になったのは約4年前。段階的にレベルアップしてきています。」
1年を通じて保全活動の日程をあらかじめ確保し、工場長、部門長、ライン長といった役職に関係なく、全員が参加すること。部門を超えて学び合い、それぞれの現場に持ち帰ること。
さらに、保全の日には必ず若手がリーダーやサブを担う仕組みも組み込まれています。
春日井製菓の保全活動は、設備保全の枠を超え、自ら考え、行動する、ボトムアップ式の組織づくりの現場でした。
機械を守ることが、人を育てることにつながる。
そして、人が育つことが、工場をさらに強くする。
この取り組みは、製造現場における競争力の源泉が「設備」だけでなく「人」にあることを、改めて示していました。
最後に、この日私が担当した包装機械のベルトコンベア(カーブ部分)の分解清掃のビフォーアフターを紹介します。リーダーに手取り足取り教えていただきながら、とてもきれいに仕上がり、うれしくて仕方がない広報担当でした。
次は、ほかの製造部門の保全活動にもぜひ参加してみたいと思います。
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