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【2026年】5月10日「黒糖の日」沖縄県の離島でのみ作られる『沖縄黒糖』 受け継がれていくバトン その④

〜離島最大の製糖工場・宮古製糖多良間工場の生産最前線〜

1980年の発売以来、半世紀に渡り、幅広い世代に愛され続けているロングセラー商品、春日井製菓の「黒あめ」※1。この原料となっているのが、『沖縄黒糖』です。『沖縄黒糖』とは、沖縄県の8つの離島で栽培されるさとうきびから作られた黒糖のみに与えられるブランド名です。(※詳細はこちら) 

8つの離島(伊平屋島、伊江島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)で作られる黒糖は、原料は同じさとうきびであっても、それぞれの気候や地形、土質、さらに製造方法などにより味が異なります。今回は、8つの工場で最大規模の生産量を誇る、宮古製糖多良間工場をご紹介します。

※1 「黒あめ」には独自の配合で沖縄黒糖を使用。今回紹介する多良間島の沖縄黒糖を使用しているとは限りません。※2 以降「沖縄黒糖」を、便宜的に「黒糖」と表記しています。 

プロペラ機で多良間島へ

上空から見た多良間島。TARAMA BLUEの海

沖縄本島の南西、宮古島と石垣島のほぼ中央に浮かぶ多良間島。宮古島からプロペラ機に乗り込み、約20分の空中散歩。窓から見下ろす海は、「TARAMA BLUE」と呼ばれるほど離島の中でも特に透明度が高く、ダイバーたちの憧れのスポットでもある。搭乗中のプロペラ機特有のエンジン音も、タラップを降りてもしばらく体が震えているような感覚も、なかなかできない貴重な体験だ。楕円形の多良間島は、人口およそ1,000人。島の周囲は約20kmで、自転車でぐるりと一周するのにぴったり。島には「トゥブリ」と言われる、海へと続く小道がなんと47カ所もある。一つ一つに、「タカアナ」「マガリ」「ウプドゥ」など、その土地の特徴を表す名称があり、それぞれ異なった景色が目の前に広がる。お気に入りの「トゥブリ」を探すのも、島探索の楽しみの一つだ。

島の人口よりも多い肉用牛

多良間空港は島の西側に位置し、今回の目的地である多良間工場は、反対の東側にある。空港から車に乗り、まず目に飛び込んできたのが、道端で悠然と草を食むヤギたち。飼い主に連れられ、ゆるりと流れる島時間をマイペースで楽しんでいる。さらに工場へと車を走らせると、車窓から視界に入るのは一面のさとうきび。収穫期も終盤に差し掛かった頃とのことだったが、空に向かってまっすぐに伸びる大量のさとうきびが、風に揺れていた。そのすぐ横に広がるのは牧場だ。多良間島では、島の人口をはるかに上回る、約3,000頭の肉用牛が飼育されている。どれだけ走っても、さとうきび畑と牧場しかない。そういえばこの島にも信号がないのだろうか。波照間島にはなかったが…。

「多良間島には1カ所だけあるんですよ」

と、ハンドルを握り、真っ黒に焼けた顔をクシャッとさせて笑顔で答えてくれたのは、宮古製糖多良間工場長の下地明さん。多良間島生まれの下地さんは、10代後半に島を離れ、東京で電気技師として働いていたが、40歳の時に声がかかって島にUターン。以来工場を任されて20年になるという。

島独特の土質が離島最大の収穫量の理由

効率よく収穫するのに欠かせないハーベスター

下地さんによると、今シーズン(2025〜2026年)の多良間島のさとうきびの収穫量は、2万2,000〜2万3,000トンぐらいの見込みで、黒糖換算では3,000〜3,200トン程度を見込んでいるとのこと。沖縄の離島8島の中ではダントツの黒糖生産量で、2位の波照間島のおよそ2倍。もっとも少ない粟国島の約11倍にもなる。(沖縄県農林水産部糖業農産課発表による「令和6/7年度「和とうきび及び甘しゃ糖生産実績」より)

「昨シーズンはさとうきびの収穫量が2万9,000トンと大豊作でした。喜ばしいことではありますが、豊作だと通常3月で終わる製糖作業が5月まで続くことになり、次のシーズンへの作付け準備が遅れるため、翌年の生産量に影響が出てしまいます。工場の安定経営という点から言えば、今年ぐらいの量がありがたいんです」。

この工場では、通常1〜3月が製糖期にあたり、1日に30〜40トンの黒糖を生産。この3カ月で一年分の黒糖を作る。この規模を三交代制で支えるスタッフは、130名に上る。島の人口が約1,000人なので、島の1割以上の人がこの工場に関わっていることになる。

ではなぜ沖縄の離島の中でもさとうきびの収穫量が多いのだろうか?

「“島尻マージ”と呼ばれる、琉球石灰由来の、泥質で柔らかな地層が多良間島の特徴です。透水性がよいため排水に優れており、大雨の翌日でもすぐにハーベスター(さとうきび専用の大型コンバイン)を入れて収穫ができることで、収穫期を逃さないのは他の島とは違う強みかもしれません」と工場長。

さとうきび畑で現状の説明を受ける

2町のさとうきび畑を持つ嘉手苅光徳さん(76歳)。2日間で5トンほどのさとうきびを収穫。「今年のさとうきびは質が良く、生育も順調です」

もう一つ、さとうきびの生育を大きく左右するのが台風だ。昨今の地球温暖化により、台風の進路が変わってきたことでの影響が大きいという。

「台風の減少が悩みの種です。台風が来るとさとうきびは倒伏し、そこから起きあがろうとすることで、糖度も質もグッと上がります」。

干ばつが大敵なさとうきび。とはいえ、台風ばかりでも生育はままならない。“程よく”台風が来てほしい。当たり前だが、思うようにならないのが自然相手の農業の宿命でもある。

いざ工場内へ

他離島のどの製糖工場よりも規模が大きい。巨大ボイラーが目を引く

工場を訪れたこの日は、機械点検のために稼働が一時的にストップしていた。製造工程の流れが見られなかったことは残念だったが、機械音が響かない、静かな工場でじっくりと見学できたことは貴重な経験だ。

層になった黒糖。色がそれぞれ違うのが多良間島の黒糖の特徴

まずは多良間工場の黒糖の特徴を、ということで目の前に用意されたのが、完成された黒糖の塊。

「黒糖の製造工程は、どの島もほとんど同じです。ただ、仕上げの工程で、オープンパンと言われる“開放型蒸発釜”を使用するのは、波照間と多良間の2工場のみです。130度まで一気に液状の黒糖を炊き上げ、冷却攪拌機で結晶化させるため、他の工場の真空蒸発缶より水分量が少なくなります。当然硬いですし、断面を見ると層があるのが特徴です。オープンパンは全て自動化されていますが、エラーが発生する恐れもあるため温度計に関しては、隔測温度計を併用し管理しています。空気を含みながら練り上げる際に、外側は空気に触れて早く固まり、内側はじっくりと結晶が育つ。この違いが層となるのです」。

ほろほろと崩れるイメージしかなかったが、とても素手で割れるようなものではなかった。叩いてみるとコンコンと音がするほど硬い。ギュッと中身が詰まっていることを体感した。多良間の黒糖は味が濃厚と言われるのも納得だ。

3台並んでいるオープンパン

工場内を歩き、バガスと言われる製造工程で発生する搾りかすを集積する場所へ案内された。このバガスを燃料に蒸気を発生させ、自家発電しているのはこの工場だけだ。さらに燃料として使って余ったバガスを、畜産農家から出る家畜の排泄物と混ぜて堆肥化し、圃場に還元している。

「さとうきびの葉柄や工場から出る灰もすべてこの堆肥化サイクルに組み込まれており、島全体での物質循環が完成しているのがこの島の特徴なんです」。

「感覚」ではなく「数値」を重視

モニター付きの制御室ですべて管理している

製造工程に関して、下地工場長の考え方が色濃く反映されているのも特徴の一つだろう。

「今、一番不安を感じているのは、黒糖自体がどのようなものなのか、長年にわたって曖昧な表現をされてきたということです。色彩、色感などきちんと数値化して、たとえば春日井製菓さんが『この色の濃さの黒糖が欲しい』と指定された時に、これまでは何となくこの色が近いからと判断していたものを、数値化して希望どおりのものを作るべきなのです」。

さらにHACCPに沿った衛生管理を徹底し、毎年監査を受けている。そのために、数値を明確に記した書類が必要だが、それ以上に、より良い製品を作るためにも数値化は必須だと語る。工場長は現場の責任者に、さとうきびの搾汁のpH、糖分の割合を示すブリックス値、さらに不純物を取り除いた状態の「清浄汁」の状態まで、すべて数値を記録し、頭に入れてから仕事に入るよう、徹底するようにと伝えている。

また、搾汁から製品化までにおよそ8時間かかるが、その間に何度かチェックポイントを設け、数値次第では粉状から固形に変更するなど、その時に最高のものを作ることにこだわる。

危機感からの人材育成に対する強い想い

下地明工場長。沖縄黒糖愛、従業員愛があふれている

「たとえば製品化されたもののpHが基準値と異なれば出荷しません。なぜそうなったのかも、すべて記録を遡ればわかるようにしています。毎日記録しておけば、安定した高品質な黒糖を販売することができるのです。とにかく数字を見なさいと言い続けています。昨日と今日でどこが違うのか。数値で判断しなさいと」。

この工場には専用の分析室がある。一般生菌、耐熱性菌、大腸菌群、カビなどを全製品、全ロットで毎日検査している。外部委託や抜き取り検査で済ませる工場が多い中、全数を自社で検査を行うことで、多良間黒糖の安全性と均質性を支えている。職員の中に分析官がおり、年に1、2回は微生物研修や力量検査への参加が義務付けられている。「外を見せることが大事」という工場長の信念が、人材育成にも貫かれている。

箱詰めの工程。箱には黒糖のランクが印字されている

「今、やらなければならないことは、沖縄黒糖を製造する8工場間の品質の情報共有と格付け者同士の交流の実現です。当工場には『格付け者』の免許保持者が3人います。彼らの承認なしでは出荷はできません。規格外品を出さない仕組みを徹底しています。しかし、8工場が集まった場でも、『これは特等とは言えない』とはっきり指摘できる格付け者が少なく、経験値のない人が格付け者になっていることに危機感を持っています。格付け者のレベルが下がると、品質の良し悪しの正当な判断ができなくなる。また、集まって品質を評価するのですが、遠慮して本音をなかなか言わない雰囲気が当たり前だったのです。でもそれではダメなのです。もっとすべてをさらけ出し、本気で言い合って、良いところは取り入れていくという姿勢が必要です。理想は人材交流を行うこと。何とか実現させたいのです」。

人手不足解消の秘策

さとうきびをそのままかじらせてもらった。記憶に残る爽やかな甘さ

シーズンになると県外から75名ほどの季節労働者がやってくる。姉妹都市連携を結んでいる岩手県宮古市から、毎年3、40人の人がやってくる。宮古島の漁師も合流。さらに外国人労働者も6名在籍しており、安定した人員を確保している。ここにも工場長のアイデアが生かされている。寮費はもちろん、食費も光熱費もすべて無償化にした。待遇改善の意味合いもあるが、食費を徴収すると寮内での自炊につながり、ガスの使用による事故リスクが高まるという安全上の判断でもあった。さらに、毎年新たな顔ぶれになるため、ゼロから教育しなければならない。ここにも工場長の秘策があった。12月1日のシーズン初日から20日間を教育期間と決め、ゆっくりとしたペースで技術を習得する仕組みを導入した。

「新人への教育は、既存社員がもう一度一から学び直す機会にもなりますし、人を見る目を養うという意味で価値があります」。

と前向きに捉えている。また、技術が「人」に偏らないよう、ここ10年間は毎年人事異動を行い、複数の工程を熟知するジェネラリストの人材を育成してきた。少数精鋭で現場を回す基盤を、長期的に作り上げてきた。

 

裁断されたさとうきびを、まずはここで選別

製造現場に関しても、人材育成に関しても、先を見据えたシステム化がうまく進んでいる多良間工場だが、その大きな理由の一つに、下地工場長の一人一人を思う温かさがある。この日、緊急で機械が止まっていても、再稼働の準備などで現場の人たちは何人も作業をしていた。若手からベテランまで、その場に居合わせたすべての人に、1人ずつ大きな声で下の名前で呼び止め、笑顔で自ら歩み寄っていく。

「おはよう!調子はどう?」

「準備は順調?」

「工場長、そろそろ動くんじゃないでしょうかね」

「いいね。それじゃ、よろしくね!」

リズミカルな会話が工場内のあちこちで響く。下地さんの明るさと人懐っこさ、そして何よりも「人」を大切に思う気持ちが、工場全体の爽快な空気感を生み出していた。

<NEWS TOPICS 1>

沖縄県黒砂糖協同組合と春日井製菓の情報交換が行われた。

協同組合での情報交換会

①黒糖ポリフェノールのブランド化

6年間にわたって、ポリフェノールの研究を独自に進めている春日井製菓商品開発部の本田寛幸さんが、「黒糖ポリフェノール」のブランド化構想について語った。チョコレートメーカーが、「カカオポリフェノール」をパッケージ表示できるようになった成功事例をあげ、メーカーが健康価値を商品に打ち出しやすくなる。ただし一社では難しいため、業界全体で取り組みたいと意気込みを語った。

②沖縄黒糖のGI認定と展望

沖縄黒糖は2025年11月17日付で地理的表示であるGIを取得。GIは、類似品や「沖縄風」黒糖への歯止めとなる。認証制度を整え、沖縄黒糖及び沖縄黒糖を使用した商品の価値向上を図るため、使用基準を策定中である。

③沖縄黒糖カンファレンスの継続開催

春日井製菓も受賞した、第1回黒糖カンファレンス。来年開催予定の第2回にむけて、リモート配信の活用や、終了後の懇親会の開催など、参加者同士の横のつながりを生む仕掛けを検討している。

<NEWS TOPICS 2>

波照間製糖管理部の西村さんに、波照間製糖の人材についてヒアリングを実施。

①北海道と業務提携で人材交流

波照間島には、「ゆいまーる(相互扶助を意味する言葉)」と言われる、昔ながらのさとうきび収穫の「組」制度が残っている。農家同士で「班」を作り、同じ組の畑のさとうきびを収穫していくものだ。「ゆいまーる」によって収穫にかかる人手を補い合うことによって計画的に収穫・搬入を行うことができる。また計画的に収穫を行うことは「刈置き」を防ぎ、常に新鮮な原料が工場に搬入されるため、高品質な黒糖製造にもつながっている。現在製糖工場は働き方改革による残業規制により、これまで以上に人員確保が必要となっているが、昨今の働き手不足や、勤務地が離島の離島という不利性から人員確保が困難な状況である。そのような状況の中、新たな取り組みとして2025年に北海道の農業法人と業務提携を開始。北海道でじゃがいもなどの収穫をしている外国人人材に製糖期(冬場)の離島での製糖業務を委託するというシステムを構築中である。また重機オペレーター等、有資格者を確保するため業務提携先の企業と協力して資格取得による人材育成に取り組んでいる。

②SNSを活用した人材募集

新聞広告や求人誌等を利用した人員募集を実施しているが、更なる人員確保のため、製糖期にはSNSを活用した求人募集を実施。1日1投稿を続け、波照間島での人員確保が困難な状況に共感を受けた皆様から今期操業開始前の求人投稿に9.3万インプレッション(その後も23万、6.6万 ※2026年4月末現在)が付き、さらに実際の雇用につながったケースもあるため引き続き情報発信を続けていきたいと考えている。波照間製糖公式X

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この記事で使われた商品

直火炊き、また食べたくなる 香ばしさ。

沖縄黒糖を使用した香ばしい黒糖の味が広がります。直火炊き製法で、また食べたくなる味わいの黒あめです。

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直火炊き、また食べたくなる香ばしさ

沖縄黒糖を使用した、香ばしい黒糖の味が広がります。
直火炊き製法で、また食べたくなる味わいの黒あめです。
【香料不使用】

ライター/ましもさとこ

一日一餡を公言するあんこ好きライター。
甘いもしょっぱいも熱いも冷たいも、どんなお菓子も人間もなんでもござれ!
ただしあんみつは断然黒蜜派。自家製梅酒やポテトサラダにも沖縄黒糖を使う。
沖縄黒糖の塊を削って、カフェオレに乗せて飲むのが最近のお気に入り。