我らおかしな改善隊!vol.1 相生工場の巻

今や海外の企業も使う日本語、“KAIZEN(改善)”。ものづくりの企業では当たり前のこの言葉は、春日井製菓でも部署や役割や勤続年数に関わらず、日々の仕事に浸透しています。もっとおいしく、もっと安全に、もっと早く、もっと楽しく…。昨日より今日、今日より明日をもっと善くしていこうと奮闘する社員の中から、部署も役割も違う、あまり話したことのない3人を集めてインタビューした内容を、社外にも公開しちゃおう!という試みが、この企画「我らおかしな改善隊」です。

第1弾は、兵庫県西部にある造船の町として名高い、相生(あいおい)市の相生工場が舞台。ここは、牡蠣の養殖が盛んなことでも知られる相生湾をすぐそばに臨む静かな場所で、「キシリクリスタル」などのノンシュガーキャンディや、くちどけの良いおいしいラムネを製造しています。

実はこの相生工場は、経営母体が4回も変わるという激動の歴史の持ち主。もともとは三星(さんせい)食品という日本企業でしたが、キシリトールの結晶化に世界で初めて成功したことで誕生した「キシリクリスタル」が大ヒットしたことにより、英国キャドバリー・シュウェップス社が買収。後にその会社を米国クラフトフーズが買収し、そこから菓子だけを扱うモンデリーズ社の傘下でキシリクリスタルを製造する拠点となりました。そして2017年後半、春日井製菓が仲間に迎え入れました。そんな、社風もルールも違う会社で育った3人が、それぞれの過去と現在と未来を、ざっくばらんに語り合うこの企画。どんな化学反応が起きるか、一緒にお楽しみください。


小渕 友和さん
相生工場 工場長
三重県四日市出身。入社29年目。
高校卒業後、とある漫画に憧れて、
当時独身寮のあった春日井製菓に入社。
2022年より相生工場長に就任。


太田 陶子さん
CSR促進課・品質保証チーム
奈良県出身。
理系大学院卒で研究所で勤務した後、
2010年にキャドバリー社に語学サポートの派遣社員として入社。
現在は正社員としてCSR促進課で品質保証を担当。


荒井 哲也さん
生産本部
兵庫県赤穂市出身。
2002年に三星食品時代に入社。
現在は相生第2工場にて
キシリクリスタル製造に携わる。

日本企業から外資系企業、そして春日井製菓へ。

司会:それぞれ、これまでの歩みについてお聞かせいただけますか。

荒井:学生時代は関東で過ごし、Uターン就職で赤穂市へ戻ってきました。新卒で水産加工品メーカーに就職して5年ほど経験を積んだ後に、キシリクリスタルを開発した三星食品へ転職しました。キシリクリスタルが発売された翌年の2002年の8月に入社したので、通算20年ほど経ちます。その間に所属会社にはいろいろ変遷がありましたが、ずっとお菓子づくりの仕事に携わってきました。直近では2年ほど単身赴任で春日井工場に異動し、2ヶ月前に相生に戻ってきました。現在はキャンディの製造を担当しています。

司会:先ほど工場見学しまして、できたてほやほや、まだ温かいキシリクリスタルをひと粒もらったんです。美味しくて感動しました!

荒井:温かいキャンディを口に入れる機会ってあまりないですよね。キシリクリスタルは3層構造で、真ん中がキシリトールの層です。その生成は独自の技法で、熱の微妙な調整が品質に関わってくるため、気が抜けないんですよ。

司会:続いて太田さん、お願いします。

太田:2010年の11月、まだキャドバリーだった時代に派遣社員として入社しました。私は相生市在住で、当時は通訳になる勉強をしていたんですが、相生市内に「外資系企業がある」と紹介されたんです。語学的なサポートが必要ということで入社しましたが、常に海外の方がいるわけでもなかったので、徐々に購買業務も手伝うようになりました。入札の段取りや海外との交渉、契約書レビューなど、仕事の面白さも知りました。現在はCSR促進課で、主に品質保証を担当しています。

司会:品質保証チームはどんなことをする部署ですか?

 

太田:春日井製菓の経営理念である「おいしくて、安心して多くの人々に愛され続けるお菓子作り」の核となる、安心して安全な食品を皆様にお届けするために、食の安全に関わる仕組み作りをする部署です。また従業員一人ひとりが安全意識を高めるように教育・啓発活動をしたり、外部監査への対応もしています。


司会:では小渕工場長、お願いします。

小渕:私の入社時の志望動機は独身…(小声)

司会:え?今なんて?

小渕:いや、あの、『ツルモク独身寮』っていう、その頃夢中になっていた漫画があったんです。影響された私は、「独身寮に入りたい!」と。就職活動時に見た求人票は、独身寮・給料・ボーナスの欄しかチェックしておらず(笑)。車のレースも好きだったので、鈴鹿サーキットへの利便性がいいエリアで、というのもあったかな。それで目に留まった春日井製菓に入社した、という不純な動機です…

司会:なるほど(笑)。

小渕:念願の独身寮で社会人生活がスタートし、最初に配属されたのは名古屋市西区にある笠取北工場でした。当時の春日井製菓は生地からチョコレートを作っていたんですが、食品メーカーを希望していたわけではなかった私は、配属1日目にして「辞めよう」と思いました。湿度も温度も高い工場の環境に馴染めなかったんですよね。でもまずは7〜8ヶ月は続けよう、と気を取り直して続けるうちに体も慣れてきて、今度は車のローンを組みました。「ローンの支払いがあるから辞めない」と自分で自分を追い込んだんです。

司会:どんな車を買ったんですか?

小渕:「カルディナ」です。当時ステーションワゴンブームで、カスタムにも精を出したら、ますますローンがかさむことに(笑)。そこから17年、チョコレート生地の製造に携わりました。以降は、新規プロジェクトの立ち上げに関わったり、春日井工場、本社工場への異動や部門長の経験を経て、2022年に工場長として相生に来ました。

人の交流で、新たな風を吹き込む。

司会:工場長として相生へ。不安はなかったですか?

小渕:不安しかなかったですよ。先に相生への異動の話があって、部門長としてだと思ったら、「工場長として」と後から聞いたので、ダブルで不安の種が膨らんでいきました。

司会:着任して、実際はどうだったんでしょうか?

小渕:同じ会社になって4年になるけど、春日井製菓の文化との間に違いがまだ結構あるな、というのが最初の印象です。私は入社以来ずっと春日井製菓で育ってきたので、その調整に気を遣いました。

司会:「調整」とは、春日井製菓のやり方に寄せていくんですか?それとも双方で折り合う場所を探 す感じですか?

小渕:どちらかに振るわけじゃなくて、互いの「いいところ」に寄せていく視点です。相生でのいいところは残した方がいいですから。

司会:「春日井製菓に合わせよう」じゃなくて、まずはここでの最適化を図る?

小渕:まず自分が理解した上で、いいものは尊重する。逆に春日井製菓で採り入れた方がいいと思ったことは、相生でのやり方を本社に提案する。逆もまた然りです。自分の役割としては「架け橋になる」ことも期待されてるんじゃないかな、と思っています。

いいところを見つけてつなぐ、架け橋として。

司会:工場長の役割について、もう少し詳しく教えてください。

小渕:一番は、「工場のみんなが幸せになるためにきちんと運営をしていく」ことですね。一般的な言葉でいうと「工場として最終的な責任をとる」役割なんでしょうけど、いかに工場の人たちが「やりがいを持って仕事できるか」、その環境整備が大事だと私は思っています。相生工場は、三星食品→キャドバリー→モンデリーズ→春日井製菓と運営会社が変わってきた歴史がありますから、さまざまな想いを抱えている人たちの集まりでもあるんじゃないかと。

司会:荒井さん、太田さんから見て、小渕さんが工場長で相生に来る、と聞いた時はどう思われましたか?

荒井:私も2年ぶりに相生に戻ってきたばかりだったので、「新工場長はいい人だといいな」と思ったくらいです。1対1の面談をしてくれましたよね?

小渕:1on1(ワンオンワン)ですね。私自身の経歴などもお伝えしての、ラフな面談をやりました。

司会:自分が工場長として新しく相生に行くから、自分を知って欲しいし、相手のことも知りたいから一人ずつ個別にお話をした、と。

小渕:そうです。着任初日、皆の前で「1on1します」と宣言して、64名全員、一人30分ずつ行いました。

司会:かなり大変ですよね?なぜ?

小渕:自分を知ってもらうこと、そして皆さんを知る機会を作っていきたかったんです。日常業務では、現場だとユニフォームを着ていて見えるのは目だけじゃないですか。そしてコロナ以降はマスクをしてるので、私服姿でも顔がわからなかったりする。そこでじっくり話を聞いて、どういう人なのかをまず知りたいと思ったんです。

太田:私は、「そんなことできるのかな?」と思っていました。新任の工場長がそんな時間とれるのかな?って。業務の引き継ぎやわからないことを調べる時間だって必要だろうし、その状況で1on1をされるのか、とちょっとびっくりしました。

小渕:もうひとつ裏テーマがあって。実は私、人と話すことはあまり得意じゃなくて。あと「傾聴する、自分の考えを伝える」という自分のスキルアップのためのトレーニング、というお題を自身に課してみたんです。

司会:64名と1on1を済ませた後、ご自身の中で何か変化はありましたか?

小渕:全員と実際に会って話をすることで、多少なりとも顔見知りになれたし、私も少し自信がついたかな、と思います。

自分の居場所は、自分でつくる。そのための努力は全力で。

司会:太田さん、運営会社がいろいろと変わって、実際どうでした?

太田:私はキャドバリー時代に通訳としての英語力を買われて入社してるんですが、2018年に春日井製菓と合併して純日本の会社の相生工場となった時点で、正直、「自分の居場所は無くなった」と思いました。転職も考えたのですが、社内での働きかけや、自分ができる努力をしたうえで「春日井製菓に期待をしよう」と思い留まることにしたんです。その選択は正解だったと今では思っています。2020年12月からは正社員となり、品質保証のグループで仕事を続けられることになりました。忖度なしで、春日井製菓は従業員を大事にするいい会社だと思っています。

司会:太田さんのキャリアは、元々の「通訳」からの変遷がすごいですね。

太田:そうですね、私の過去を言い当てられる人は、この会社には誰ひとりいないかもしれません(笑)

司会:太田さんが言った「自分の居場所を確保するために、いろいろと社内に働きかけた」とは、何をされたんでしょうか?

太田:私には売り込むスキルがないと思っていたので、「できることがあったらなんでもやらせてください!場合によっては子どもを連れて転勤もできますから!」くらいのことを言っていた気がします。

司会:太田さんはガッツを売り込んでいた、とも言えますね。すごい行動力!ご自身を変えることをいとわなかったんですね。

太田:キャドバリーと春日井製菓で、尊敬できる上司との出会いがあり、この会社に居たい!と思ったんです。春日井製菓には、人に期待をして、育てる環境があるのも魅力です。

司会:皆さん、ありがとうございます。最後に、このインタビュー企画の『我らおかしな改善隊』というタイトルに戻ってお尋ねします。荒井さんは何を改善していきますか?

荒井「話しかけやすい雰囲気作り、表情作り」ですかね。年下だろうと年次が浅かろうと、ちょっとした情報交換から改善のアイデアが出ることもありますから。仕事をしやすい部署へとどんどん進化させていきたいです。

司会:太田さんは、何を改善していきますか?

太田:難しいお題ですよね。
管理部門の仕事って結構標準化が難しくて。チーム内は優秀な方ばかりなんですけど、その方々の「人の頭の中に眠る財産(情報)を見える化」したいです。

司会:なるほど、「散らばった情報を整える太田さん」ですかね?

太田:マニュアルにできるところは既にしているんですけど、
どうしても標準化しにくい部分があるんです。例えばエクセルの使い方にしても、その人にとって最適な方法が、他の人にわかりにくかったり。
スケジュール管理も、手帳に書く人とエクセル等に書く人、アプリを使う人などいろいろですよね。業務上も、さまざまな事情がある中で標準化、見える化、誰でもわかるように、というのはものすごく難しいとは思うのですが、少しでもできればいいなと思っています。

司会:では小渕さんは何を?

小渕:工場長に就任してまだ半年弱ですが、つくづく感じているのは「工場が成り立ってるのはメンバー一人ひとりのおかげ」ということ。現場の方々を見て、「きちんと感謝して評価して次のステップに引き上げる」ことが私の役割の一つだと思っています。

司会:さっきおっしゃった大きな目標「ここで働く人を幸せにする」に向けた具体的な方策ですね。ありがとうございました。最後に、今日はどうでした?

小渕普段聞けないような話が聞けて、貴重な経験でした。

太田:お二人の意外な一面というか、入社されてからの歴史を知ることができて興味深かったです。また「改善ってなんだろう」と考えるきっかけを得られました。個人的には「人生、本当にいつでもやり直しできるんだよ」ということを体現して、周りに伝えたいと思っているので、その目標も改めて認識しました。

荒井お二人の経歴をこうやって自然な流れで話しながら聞けてよかったです。でも一番印象に残ったのは、小渕さんの「ツルモク独身寮」…(笑)。また、太田さんは普段とても謙虚に丁寧にお話してくださる方なのに、実は内に秘めたるアグレッシブな行動力をお持ちの方だったことを知りました。

 

<取材を終えて>

最初は猫だと思ってたら、話すうちにだんだんと前のめりになって‘虎’のイメージに豹変した太田さん。

言い切ることを避けがちだったけど、最後には自発的な言葉に変わっていった荒井さん。

外からの風を送り込み、本社と相生工場の‘架け橋’になろうと行動を起こしている小渕さん。

性格も仕事へのアプローチも全く違う三人のお話を通して、それぞれの心に小さな火花がパチパチっと弾けたように感じました。

皆さん、貴重な機会をありがとうございました。

 

聞き手と書き手 村田真美(株式会社mana)

 

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