沖縄黒糖

5月10日は「黒糖の日」 沖縄県の離島でのみ作られる『沖縄黒糖』 その甘く優しい“秘蜜”にズーム その②

〜野生生物の宝庫・西表島「西表糖業(株)」編〜

西表島のさとうきび畑でハーベスターを使っての収穫

沖縄黒糖の製造工程に迫る工場潜入レポートその②は、西表島の西表糖業(株)へ。さとうきび畑では、ちょうどハーベスターが次々とさとうきびを切り倒していく様子を見ることができました。切り倒しながら等間隔に裁断し、葉を風で飛ばし、茎を集めるという作業を同時に行う巨大収穫機・ハーベスターが、もっとも人力が必要とされる「収穫」の救世主となっています。西表糖業(株)の黒糖づくりに迫ると共に、沖縄黒糖の未来についてのストーリーです。

 

西表島の製糖工場に潜入!

西表島へも石垣島から高速船を使い、乗船時間は約40分。沖縄本島に次ぐ県内2番目に大きな島で、絶滅危惧種に指定されている国の天然記念物「イリオモテヤマネコ」の生息地としても有名だ。波照間島との違いは?島の中に信号があったことと…。

ん???さとうきび畑の隙間から目に飛び込んできたのがこの超巨大モニュメント!?

「びっくりしますよね。イリオモテヤマネコの滑り台です。かなり傾斜がキツく、なかなかスリリングなんですよ」と笑いながら説明してくれたのは、西表糖業の統括部長、赤嶺穣さん。

次回、ゆっくりチャレンジしてみよう。

左から赤嶺さん、春日井製菓商品開発部の本田さんと商品本部長の川鍋洋治さん、 食品商社の福山良太さん、西表糖業総務部の宇根良祐さん

西表糖業の創業は波照間製糖の1年前の1960年。年間のさとうきびの取扱量は、2023年でおよそ8994t。島では病原対策のために、一つの品種に偏りが出ないよう、現在は8品種のさとうきびを栽培している。

 

「面積は沖縄本島に次ぐ大きさなんですが、ほとんどが山なので、住める面積が少ないんです。さらに島全体が西表石垣国立公園ですからなかなか開墾もできません人口は2000人ほどでしょうか。

農家で見ると、さとうきびを栽培しているのが全体の7割ぐらいで、パイナップル、マンゴー、米と続きます」(赤嶺)

西表糖業の赤嶺さん。那覇の自宅と西表島を行き来している。石垣島から西表島への船便は本数も多く、天候にあまり左右されなので通いやすいとのこと

やはりさとうきび農家が圧倒的に多いのは、波照間島と同じく台風襲来時の影響を受けても全滅することはないと赤嶺さん。どんなに台風の被害が出ても、さとうきびの場合は被害にして30%に達しないとのこと。一度や二度倒されても、さとうきびの先端がまた太陽に向かって伸びていく。マンゴーなども魅力があるが、台風が来たら収穫がまったくできなくなることも珍しくない。

 

いざ工場へ!波照間製糖(株)との違いに注目

写真の奥に見えるのが脱葉施設

基本的な作業工程は波照間製糖と変わらない。国の政策で、8島の工場は順次リニューアルしているため、波照間製糖と同様、最新鋭の設備が整っている。

西表糖業は、脱葉施設を持っているのが特徴だ。前処理の段階で手刈りとの違いは、機械刈り(ハーベスター)で約30cmにカットされたさとうきびが、そのまま脱葉施設に持ち込まれると、強い風で枯葉を吹き飛ばし、きれいな状態の茎にする。

また、手刈りで収穫された場合も、葉が付いたままの長いさとうきびを、脱葉施設でハーベスターと同じようにカット、葉を吹き飛ばすこともできるため、さとうきびの鮮度を落とすことなく、生産農家の労力も低減できる。

基本的な作業工程はその①で紹介した、波照間製糖と大きな違いはないので圧搾工程から簡単に。

①圧搾工程→搾りかす(バガス)はコンベアでボイラーへ

②搾り汁を加熱、濾過。不純物は畑の肥料に

③気圧を少しずつ下げていきながら濃縮

ここがポイント

仕上工程も密閉状態のまま「連続仕上濃縮機」を使用し、濃縮されたものが次の冷却工程へと送られる。波照間製糖のワンバッチのように1回ずつではなく、連続して送り込まれる

効率は良いが、職人が状態を目視で確かめることはできない。

冷却かく拌されて出てきた黒糖約2kgを計量。15回に分けて少しずつ箱に詰めていき、最終的に30kgにする

ここでもできたてを試食。温かくて柔らかく食感も味も格別。黒糖好きにはたまらない。いくらでも食べられそう

こちらも集中管理室で全工程を監視している。

 

本物の黒糖のおいしさを多くの人に伝えたい

黒糖研究について説明する春日井製菓の本田さん。現地での情報交換は重要

西表島の農家の人にとって、さとうきびはどんな存在か、赤嶺さんに尋ねた。

「離島はどこもそうですけど、結局さとうきびしか作れないんです。台風襲来地域ですから。安定した収入源なので、まさにさとうきび栽培は生きる術です。だからこそ黒糖をもっと多くの人に知ってもらって、食べてもらいたい。世の中を見渡すと、価格の安い輸入ものを使っている商品が多いんです。

なんとか内地の人にも沖縄黒糖のおいしさを知ってもらいたいんですが、そもそも黒糖を食べる習慣がないんですよね。沖縄の人はそのままお茶菓子と食べるため、お菓子コーナーにありますが、内地では調味料コーナーに並ぶんですよ。もっと気軽に食べてもらうにはどうすればよいか、いろいろ一緒に考えていきたいですね」。

 どちらの工場でも、まず大きな課題となっているのが“人手不足”だった。機械化の導入も進めているが、すべてを機械化すればいいという問題でもない。さとうきびという生き物を相手に、人の手による作業は欠かせない。生産過程における人手不足もさることながら、黒糖の質を評価できる人材の減少も危惧している。

この問題を解決するために、沖縄県黒砂糖協同組合では、毎年、離島の各工場から製品を持ち寄り、検査員の研修も行っている。色、水分、硬度、結晶などの評価方法を学び、特等や1等など、正確にランク付けできる人材を育成している。

では、黒あめを作っている春日井製菓としてできることは?

さとうきびを手に取る本田さん(波照間製糖)

製造工程を見学する川鍋さん(西表糖業)

「40年以上も、沖縄黒糖を使ってくださるメーカーもそんなにありません。もっともっと使ってほしいと思いますが、それだけではなく、本田さんのような、黒糖について専門的に研究してくれる方がいるということが、この先の黒糖産業そのものの未来に光を当ててくれていると思っています。

唾液の分泌を促すとか、つい最近では黒糖によるガン抑制の論文が発表されたとか。こうした発表は消費拡大のきっかけにもなりますから。我々が黒糖を作っていることで農家を守っているのではなく、みなさんのように黒糖を使った商品を作ってもらって、それを消費者の方に購入していただくことが、農家を支えているということを、あらためて感じています」(赤嶺)

 

2工場を見学した本田さんは、「いかに黒糖製造がエコであるか、またさとうきびの鮮度の重要性、機械刈りにすべてを置き換えることができない難しさ、そして人手、後継者の問題など、実際に目の前で見て、聞いて、黒糖産業を守っていかなければならないと思いました。そのためにも消費拡大は重要。まだまだ知られていないことの多い黒糖について、新たな研究結果を見出すことで、黒糖消費につなげたいという強い思いで、研究に取り組んでいきたい」と語った。

ましもさとこ

一日一餡を公言するアンコ好きライター。
甘いも、しょっぱいも、熱いも、冷たいも…どんなお菓子も人間もなんでもござれ!
2児の母でもあり、自宅にはお菓子専用ストッカーを設置。
通称「グミ也」と呼ばれるグミ好きの次男のために箱買いしている「つぶグミ」(特につぶグミプレミアムがお気に入り)が占拠している。

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