パントマイム
Episode1

こんな風にひとりになってぼんやりとバスに揺られていると、リサにはときどきこんな声が聞こえてきます。わたしには何にもない。何もない、というのは正確じゃないわね、なんていうか特別に秀でたところがないのよね。それはリサが自分に向かって語りかける声でした。イソマキ家のリサは郊外にある叔母の家から自宅へと帰る途中でした。イソマキというのは大きな丘という意味です。まさに叔母の家はそういう広々とした丘の上にありました。リサたちは幼い頃、夏休みには家族揃って叔母の家へ遊びに行ったものでした。

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女王様の好きなもの
Prologue

これは遠く儚い夢の物語でしょうか、それとも列車で偶然隣に座った誰かの物語でしょか。あるいは、あなたの前を駆けていった母猫の見た夢かもしれません。物語の始まりはこうでした。南から北へ、北から北へ汽車で何日でも行きましょう。針葉樹の森をくぐり、草を食む牛たちの群れを眺めます。積み藁が日にさらされて、立ち込める霧の裾にニゲラの花畑。広大な湖をいくつも周ってようやくたどり着ける場所に、女王様が生まれ育ち、治めているその国はありました。