【後編②】新たな部署『おかしな実験室』が おかしな農場を始めちゃいました!?

前編で「おかしな実験室(通称:おか験)」の『おかしな実験農場』の紹介をしましたが、後編ではおか験のメンバーと畑のオーナー・林俊輔さんのホンネトークを大公開!

後編その1〜では、実験農場立ち上げの理由から、おか験メンバー一人ひとりの人物像、さらに実験農場の存在意義までググっと迫ってみました。

〜後編その2〜では、実験農場の目指す未来像に加えて、おか験メンバー以外の人たちから見た「おか験とは?」「農場とは?」のコメントをご紹介!より多角的な視点から『おかしな実験農場』とはどのような存在なのかに斬り込んでいきます。

Text by 真下 智子|Satoko Mashimo
Photo by 野村 優 | Yu Nomura

農業の価値を体感している人が加速度的に増えている

―社外参加者の皆さんにとってこの畑はどんな存在ですか?

高木:いろいろな人が来てくれるのは本当に嬉しいのですが、その人たちがリピートしてくれていないと、もしかして良くなかったのかなぁ、とちょっと落ち込むときもあります。

:高木さんは一度畑に来てくれた人が、リピートしてくれていないんじゃないかと心配していますが、私は実はリピーター率が高いと思っています。普通、こんな暑いときに農作業なんかやらされたら嫌になるじゃないですか。それなりに楽しかったけど、1回でいいかなというのが普通だと思うんですけど、もう一度来てくれるんですよ。

それはきっと、今まで気づかなかった何かを得られたからなんじゃないかなと。自分の中にぽっかりと空いている穴を、埋めてくれるものなのかも、とか。それがこの研修の特徴かもしれません。たとえば一般的な研修プログラムの場合は、「これを持って帰ってください」と成果を明確にしますよね。そういう研修は、ピタッとハマる人もいればハマらない人もいるわけです。でもここの研修にはそれがない。色々な角度から入って来て良いから、それぞれの人が気づいたものや、今の自分にとって必要だと感じたことを持ち帰ることができる。それがまた次回へのモチベーションに繋がっているように思います。

:だからこそ独り占めするんじゃなくて、開いて分かち合いたい。この醍醐味を、みんなでおいしくシェアしたいんです。異なる価値観の人とかすがって、ともに成果を出す。これこそがおか験のめざすことなので。

 

:もうそういう動きがちゃんとありますよ。旦那さんが以前「畑と自分を育てる日」に参加されて、そのご夫人が近所にいるからと、つい先ほど畑に寄って、野菜を収穫していきましたからね。週末になると、子どもが行きたいと言うからと、畑に連れてきて作業をしてくれる人もいます。あ!そういえば、以前おか験の皆にハウスの骨組みをお願いしたじゃないですか。その次の日に、参加者の中にいた大工さんが、「骨組みが少し傾いていたから、ちょっと寄りました」と直しに来てくれたんですよ。

:なんてうれしい…!技術を持っている人が自発的にその能力を提供してくれる。これが自走ってことなんですね。

農業の持っている価値を高めて、それを社会に実装する、というのが私のやりたいことの一つなんですけど、それを実際に体感してくれている人が加速度的に増えています。自分が思っていた以上のスピードと形で実現していて、もう面白くてたまらないですね。

 

畑は「創発」の場、食から始まる人とのつながり

―これからの「畑と自分を育てる日」にどんな未来を見ていますか?

 

:会社から「SDGsや人づくりに取り組んでください」と言われても、結局何をやればいいのかわからないという人は多いと思うんです。僕も初めてなのですごく考えましたが、僕らなりの一つのやり方を見てもらう意味でも、初回に管理本部の仲間に参加してもらいました。お菓子メーカーとしては「畑に来てよ」ってそりゃもう突拍子もないない話で、よくまぁ来てくれたなと今になれば思うんですが、参加した仲間からは「開放的になれて良かったよ」と言ってもらえたんです。通常なら、仕事でふと相談したいことがあっても、皆忙しいから電話しちゃ迷惑だよなとか、整理してメールしなきゃ…とか、いろいろ遠慮もあると思うんですけど、畑なら草むしりをしながら、なぜか自然と仕事の話ができちゃう。なんで農業なんてやってんの?と思ってる人も、実際に畑で一緒に作業をすると、楽しかったと言ってもらえるんです。少しずつ体験者を増やして、この「畑と自分を育てる日」を、そう遠くない将来、いろんな企業が導入する研修プログラムにしたいです。

加えて対外的にもオープンにしていますので、最初は興味本位でいいんです。そこから会社としてサステナブルな農業にも繋がる取り組みであることを理解してくれる、費用も労働力も提供するパートナー企業が出てくることが理想です。

高木:今回、試行錯誤しながらも何とか収穫まで辿り着きました。えんどう豆だけでなく、その副産物としての「人づくり・自分づくり」も想像以上の収穫でした。ただ、社内の人たちにはまだあまり知られていません。私たちも業務としてやっているので、もっと社内の人に参加してもらいたいんです。例えば営業担当者が行き詰まったら、「ちょっと畑に行ってきます」とチームに言って農作業をする。それが当たり前になると良いなと。畑が誰よりも優秀なカウンセラーになるんじゃないかと思っていますので。

新城:私自身、このプログラムを通じて自分が変わったと実感することがあります。何をするにもじっくり考えてからじゃないと言い出せないタイプだったんです。みんなに迷惑をかけちゃうかなという思いが先に立ってしまって。自分がやらなきゃ、自分で解決しなきゃ、と思っていたんですが、畑にいろいろな人が集まって、みんなで作業をやっていく中で、そうか、自分でできないことは誰かの力を借りればいいんだと思えるようになりました。僕はこのプログラムを、福利厚生の一つにしてほしいと思っています。メンタルヘルスケアの要素もありますし。たとえば週末、家族で畑に行って収穫をして野菜を持って帰るのも嬉しいですし。こうした取り組みが会社への帰属意識の高まりに繋がると、やり甲斐を見つけられずに辞めて行ってしまう人の流れも変わるんじゃないかと。

福本:私は元工場の人間として、やっぱり工場の人にもここに来てもらいたい。ただ、工場はラインで回しているのでハードルが高そうかなと。

:たとえば研修という形で朝からバスで畑に来て、収穫をして、その野菜をつまみに、業務後には『Butterfly Brewery』で飲んで帰る。というコースを作っちゃうとか?

新城:工場勤務経験があり、工場の人のことをよくわかっている健さんだからこそ、声を上げることができると思いますね。

福本:なるほど、そうかもしれませんね。農業・林業・漁業といった第一次産業には、全ての仕事の基本が詰まっていると思うんですよね。実家が農業をやっていますから、父からいろいろ教えてもらったことを思い出します。「後ろを振り返って声をかけろ!畑に出たら手ぶらで帰ってくるな!何か一つでも気づきや、人のためにできることをやって帰ってこい」と。確かにそうだと痛感しています。自分の仕事のヒントになることがたくさん詰まっているんですよね。

:私から多くの企業の方に伝えたいのは、「僕らと一緒に、未来へ投資しましょう」ということです。私が描いている未来とは、自分の会社の未来であり、貴重な資源である人財の未来です。そこへの投資は地域や社会、地球環境の未来にもつながる活動だと信じています。それはなぜか?人間誰しも生きていくために必要な食べるものを作っているからです。

食べ物を作るという活動を否定する人はいないはずです。そして、自分にとって都合の良いものだけをお金で買う社会はもう終わっています。やっぱり未来に残すべきことを、みんなで一緒に作り上げていかないと、日本だけでなく世界の未来もないんですよね。

新しい未来をみんなで作り上げていく。これを私は「創発」と呼んでいます。

異なる価値を持っているもの同士がぶつかり合うと、新しい価値が生み出されるという意味なんですけど、その場として私は畑を用意しました。食べ物を作る畑には、多くの人を惹きつける力がある。ユニバーサル農業にも取り組んでいますけど、一般社会では活躍できていない人も、存分に活躍できる場所にしたいと思っているんです。自分が支えていると思っていた人に、実は自分の食べ物を作ってもらっているんだということに気づくと、概念がひっくり返りますから。

食にこだわって、良いものを食べると、人間は心も体も健康になります。食卓で人が集って食べると自ずと笑顔も生まれます。結局、人との繋がりは食べ物を通じてできています。健康的な社会づくりに、食を通じて貢献していきたい。だから一緒に未来を描いていきたいんです。

 

<春日井製菓 総務課 中村典子さんの声>

入社以来20年以上、総務畑一筋で歩んできました。微力ながら常に働きがいのある会社を目指して業務に携わってきました。最近、管理本部では、各本部に積極的に関わり、社員一人ひとりに寄り添い、笑顔になれるような取り組みに力を入れています。今の社長の考え方が、「人づくり・自分づくり」が軸になっているからです。

そんな中、おか験が始めた畑。グリーン豆から農作業という発想には驚きました。「人づくり」をこういう形で展開していくとは、他の部署ではできないことだなぁ、さすがだなぁ、というのが最初の感想です。考えていることをちゃんと形にできてしまうその行動力が羨ましいとさえ思いました。実際に参加してみると、想像以上に青空の下が気持ちよく、日々の忙しさを忘れちゃいます。ここは仕事に疲れたときや、週末に自由にふらりと行ける場所になるといいなというのが正直な思いです。社員や家族の福利厚生施設の一つとして使えると嬉しいなと。

当社も創業95年を迎え、100年、その先をめざすなら、この先も世の中の変化に伴って変わっていかなくてはいけません。各々の業務の中では変化していますが、おか験が走り出した変化は未来のことすぎて現実と直結せず、受け入れるためには物事の目線を変える必要があると感じています。パワーも必要ですし。でもその声に耳を傾けながらも、おか験が今回のように強い力で引っ張ってくれるのは、私としても嬉しいですし、賛同もしています。できることは協力したいと思っています。

おか験がやっていることは、私たち総務と同じく、売上や、すぐ目に見える成果には直結しないかもしれません。

特におか験はそのネーミングからして、「何をやっているのかわからない」「いいよね、楽しいことをやっていて」と言われがちです。だからこそ、みんながこの畑に行って、お互いをわかり合う場になれば良いと思うんです。

1年が経ちますが、社外の方が多く、まだまだ当社の社員が参加できていません。おそらくこの畑に参加するには、初回から「業務なので参加する目的が必要」と思っていたり、「忙しくて行けない」と感じている人も多いと思います。参加する理由なんて「声をかけられたから」でまずは良いと思うんです。全員が必ず一回は参加すると決めてしまえば、第一歩のハードルはぐっと下がると思っています。参加すると新しい気づきもありますし、社外の人からの刺激も受けます。社内でも、部署が違うとどんな仕事をしているのかわからないことも多いですが、畑という場を通じて、社内での横の繋がりや、お互いを知ることもできます。

私としては、社員研修、特に新入社員研修に1日取り入れてみてはどうかと思います。座学ばかりでは疲れてしまいますから、解放される日があってもいいと思います(笑)。他にはもっとオープンにして、地域の子どもたちに向けてイベントを開催するなど、地域とのつながりの場にもなると良いですよね。

個人的には日差しと暑さが苦手でして…。汚れてもいい服や長靴を持っていない人もいるかも。そのあたりも考えていかなくては、ですね。

<ほぼ皆勤賞!社外参加者 原田亮さんの声>

職業:ソフトウェア開発
お住まい:実験農場まで車で20分ほど

― 参加のきっかけは?
とあるコミュニティ関連のイベントでおか験メンバーに出会い、声をかけていただいて、年明けから参加しました。自宅の庭でも野菜や果物、花を栽培しています。

― 実験農場で農作業をやってみて何か気づいたことはありますか?
実際に参加してみると、もちろん楽しいのですが、それが感情の起伏を伴うものではなく、穏やかに満たされた感じになれました。一次産業と二、三次産業の大きな違いは、相手がヒトか自然かです。自然相手の場合は、「どうにもならない」問題が起こりうるので、各々が謙虚になれる気がしますね。他には、旧暦、特に七十二候を意識して過ごすようになりました。

― 今後この畑に期待することを教えてください。
午前中の農作業では、農具の充実を期待します!ほかには田植えと養蜂、ヤギとニワトリの飼育なんかもやってみたいですね。午後からの研修では、価値の可視化について学ぶ機会があると嬉しいです。

― 原田さんにとってこの実験農場はどんな存在ですか?
畑 of 畑 ですかね。

<社外参加者 酒井悠行さんの声>

所属:建築設計事務所 株式会社パスワークデザイン代表取締役
   勝川エリア・アセット・マネジメント株式会社役員
お住まい:実験農場まで徒歩10分

―参加のきっかけは?
『イーアス春日井』で開催されたイベントに出店したとき、同じく出店していた原さんを紹介してもらい、畑に誘ってもらいました。何かを期待して参加したわけでもなく、強いて言えばどのような場なのか、興味本位での参加でした。

―実験農場で農作業をやってみて何か気づいたことはありますか?
まず気持ちがいい!だから何回も参加したくなるんです。そして疲れ方が今の仕事とは全然違い、心地良かったことです。これは想像していた以上でした。ただ、ポットから畑への苗の植え替えは内転筋にこたえました(笑)。この農作業に参加するようになって、観葉植物を含めて「植物」を育てることへの興味が増しました。実は、時間がなかなか取れずに午前中の農作業しか参加できていなくて。午後からの研修も受けたいと思っているところです。

―今後この畑に期待することを教えてください。
ここ一年で料理をする回数が増えましたので、えんどう豆以外の野菜にも関わってみたいです。そして現在のセミクローズな場が魅力だと感じています。紹介された人だけが入ってくるというシステムをこのまま維持して欲しいなと思っています。紹介した側が面倒を見ることを含めて配慮が行き届くと思いますので。

―酒井さんにとってこの実験農場はどんな存在ですか?
社交場です。

 

新たな部署『おかしな実験室』が おかしな農場を始めちゃいました!?前編はこちら

新たな部署『おかしな実験室』が おかしな農場を始めちゃいました!?後編~その1~はこちら

 

この体験記の文章を書いてくださった人

真下 智子さん|Satoko Mashimo

フリー編集者・ライター。同志社大学社会学科新聞学専攻卒業。食品メーカーの社員として、社内報を担当したことからライター業へ。ブライダル、旅行、企業広報誌と紙媒体からウエブまで、幅広い媒体に執筆。心の声を聞き出すインタビューをモットーに、これまで300人以上の人にインタビューを行ってきた。あんこと温泉をこよなく愛する、二児の母。温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。satchy@sc.dcns.ne.jp

この体験記の写真を撮ってくださった人

野村 優さん NOMY|Yu Nomura

昭和54年生まれ。岐阜県出身。人物、商品、建築、料理、映像などを撮影するプロカメラマン。大学でグラフィックデザインを学んだのち、レコード製作/販売会社、オンライン音楽配信会社、ECサイト運営会社を経て独立。野村優写真事務所を開設。2014年7月、「さぁ、みんなでカメラ楽しもう!」をテーマに「撮れる。魅せる。伝わる。カメラ講座」開始。岐阜、名古屋、東京、大阪、神戸ほか全国に展開中。趣味は、ジャズのレコード収集、DJ、ハーブを使った料理、もうすぐ7歳の息子とカメラ散歩。素敵、かっこいい、面白い。そう思った時がシャッターチャンス。その気持ちが写真に写り込むように。https://yunomura.net

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