おかしなくらいおかし好きおかしなはなしつぶグミプレミアムに春日井の本気を俺は見た!
つぶグミプレミアムに春日井の本気を俺は見た!
つぶグミを食べたくなる瞬間。
私の場合、多くは『“ここではないどこか”へ行きたい』時だ。
社会人2年目の冬、同様の台詞を吐き捨てて退職していく先輩を見送った覚えがあるが、彼は今、追い求めていた理想郷に無事辿り着き、WEB会議にでも勤しんでいるのであろうか。
人間なら誰しもが一度は思うはずだ。
“ここではないどこか(※ここ以外なら割とどこでもいい)”に行きてぇ、もう1秒も上司と会話したくねぇ、エクセルの関数をぶっ壊して逃げてぇ、ワイハ〜のビーチに行きてぇ、そんでもって美しい海の奥深くに潜ったまま永遠の眠りにつきtai…
と、ここに来てようやく気がつく。疲れている。思考が正常じゃない。今すぐここから離れないと、“ここではないどこか”が【天国か地獄】に確定する恐れがある。
だけどすぐには動けない。どれだけ助けてと叫んでも、あの猫型ロボットは自分のもとにはやってこない。“どこにも行けないドア”がこちらを監視しながら呟く、「終わるまで帰れねぇぞ…」、非情でリアルな話だ。
そんな時私は、デスクの引き出しにストックしてある袋を破竹の勢いで引きちぎり、いよいよ辞表を提出して天国か地獄に行ってしまいそうな己が口へとダイナミックに放り込むのだ!
行け、待望のつぶグミ達よ!
ぐに、ぐにぐにぐに、ぐに、ぐにぐにぐに
……………………….。
……………………….。
ふぁ〜〜〜〜〜〜〜〜(軽く白目をむく)
ご覧いただけたであろうか。『無』が訪れた瞬間を。
これである。この『無』こそが私を“ここではないどこか”へ連れて行ってくれるのだ。何度座禅を組んでも訪れなかった『無』が、呼び鈴も鳴らさずやってくる。しかも100円で。
コスパが良すぎて逆に(いくらか包まないといけないのでは…)と茶封筒とキャッシュを用意しそうになるが、そこは春日井製菓の努力の賜物ということでオールOKにしておこう。
とかくこのようにして保たれている我が平穏な会社員ライフ。本日もノー残業でフィニッシュ、さぁて追加の推し(補充用つぶグミ)でも迎えに行きますか!と立ち寄った店で戦慄が走る。
【つぶグミ・Premium(プレミアム)〜濃厚りんご〜】
Premium…だと?ルビが振られてなかったらプレジデントと間違えそうだ。あやうく大統領専用グミでもできたのかと、スマホでホワイトハウスを検索しそうになった。I’m So 混乱。違う、Premiumとはつまりプレミアム、上質であるということだ。
金塊を常に持ち歩いている富豪以外は必ず確認する値段を見てさらに驚いた。200円でお釣りがくる…オーマイゴッド、ゴッドがここにいます!店員さん!値札貼り間違えてませんでしょうかぁぁ!!!!
轟く叫声、震える両手、駆けつけ店員、「正規の値段がこちらです」。
なんということだ。200円でお釣りが来るプレミアムだなんて…謙虚にも程があるぞ!これじゃあ「私なんてただの億万長者のスーパーモデルなんで」と言っているようなものではないか!
私はただ、いつもの推しがいてくれれば、それで良かった。なのにどうしたことか。ちょっと目を離した隙にプレミアムになっている。一体どんなマジックなのだ。私だってちょっと目を離した隙にテイラースイフトにでもなって然るべきなのに…。
滲む悔しさはさておいて、とりあえず目の前の棚に並ぶ、推し(プレミアム)を買収せねば!
財布にある紙幣という紙幣、カバンの隅になぜか溜まっている小銭という小銭、パスモにチャージしたばかりのありったけの電子マネーで推し(プレミアム)を買収した私は、短くて遅い足を人生で一番速く激しく動かして帰路についた。
まず、いつのまに出ていた?という疑問は、春日井製菓のホームページを見たら秒で解決した。だいぶ前から色んな味でプレミアムになっていたらしい。
ちくしょう…“ここではないどこか”へ行っている間に…とんだアップグレードをしてやがった…やられたゼ…
推しの成長をリアタイできなかった不甲斐なさを噛み締める。
じゃあ何がどうプレミアムなのか?それはパッケージに説明が書いてあるでしょ、とお思いのそこのレディース&ジェントルメン。
ノー残業とはいえ【8時間PCにかじり付いた後のOLの眼精疲労と目の霞み】をナメてはいけない。見えない。読めない。パッケージの文字(主に小さいやつ)を読む眼力が残ってない。
おまけに春日井製菓のホームページで“いつのまに推し(プレミアム)が爆誕していたのか?”を血涙が出そうな思いで読み上げた直後だ。
ライフは限りなくゼロ!
こうなったらもう、感じるしかない!
この身でプレミアムになった推しを、フィールするしかない!
私はカバンを放り出して、推し(プレミアム)の袋を破竹の勢いで引きちぎり、いよいよ辞表を提出して天国か地獄に行ってしまいそうな己が口へ(以下略)…
ぐに、ぐにぐにぐに、ぐに、ぐにぐにぐに
……………………….。
……………………….。
……………………….。
……………………….。
ふぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜(壮大に白目をむく)
りんご!まさにこれはグミの形をしたりんごそのもの!りんごの能力と限界を最大限に引き出している!いますぐスーパーのりんご売り場に並べてこい!現地に赴かずとも感じられる本物のりんごが、ここにはある!
なんだと、今の一粒で目が開いてきたぞ、パッケージの小さい文字がスラスラと読める。ふむふむ、な、なんということだ!
推し(プレミアム)は品種別に3つのりんごの味が楽しめ(袋の中には3色の推しがひしめき合っていた)、さらにそのりんごの味を高い次元で再現しているというのだ。驚くことに果汁は2段仕込み!いつだって大事なことは2度言う、果汁だって同じだ。たしか仕返しも倍だと半沢が言っていた。先ほど『無』の時間が2倍になり、白目のむき方がスケールアップしたのも、気のせいではなかったのだ。
ただ、普通果汁を2回も入れたら溢れずにはいられない。もはやグミの形を保っていること自体が奇跡なのだ。ディスイズ春日井マジック!
ファーストバイト、黄緑の推しはグラニースミス(青りんご)味だった。
食感はほどよい弾力、冷やした二の腕のようだ…と例えると語弊があるので、歯が喜ぶ絶妙な噛みごたえ、とでも形容しておこう。鼻に抜ける香りも爽やか。おい、松田聖子が夏の扉を開けて行ったぞ!
豪雪でもノースリーブを着てフレアスカートをひらめかせ、サイダーの海に思い切りダイブしたらばイルカの背に乗って太平洋縦断、無事オーストラリアに到着し、颯爽とビキニで街を歩きたくなる。もちろんビキニはスミス色だ。ヘイスミス!ワッツアップ?いつのまにか英語も堪能になっている。
いよいよ春日井が本気で私をグローバルにしに来たな…
OKネクスト!赤い推しをいただくよ。これはふじ(赤りんご)味だね。
なんて情熱的な甘さ。闘牛じゃなくても突進したくなる美味しさだ。見ろ、中森明菜が妖艶なダンスでミ・アモーレしているぞ!
偶然降りた街で知り合ったカルロスと交わすサングリア、豪快に飲み干す私を、長い睫毛の影にたたえた潤んだ瞳とちょっぴり濃い胸毛、なんといってもチャーミングな笑顔で悩殺してくる。嗚呼、この手を取り強引に接吻したい。もちろん明日は(恋の)病で欠勤だ。
お、恐るべし春日井の小悪魔な陰謀…
落ち着け、最後は黄色い推しだ。こいつは我らが王林(黄りんご)味。
え、可愛い。漢字強そうなのに何この可愛さ規格外。とにかく可愛い甘さだ。ちょっとどこかの芸人のような呼び方になったが、この、ほのかで可憐な甘さは“可愛い”の一言に尽きる。食べ物の味に可愛いもクソもあるかと思うなら食ってみろ!可愛いの底力を痛感する。やっぱりな、あなたに会えてよかったと小泉今日子がキュンな眼差しでこっちを見ているぞ!
取引先のイケメンの前でおもむろにバスケットを開け、ギンガムチェックのクロスを敷いてクロワッサンのサンドイッチを小鳥のようについばみたくなる。もちろん高速でウインクをしながらだ。
春日井はどこまで私を可愛くしたら気が済むんだ。
ぐに、ぐにぐにぐに、ぐに、ぐにぐにぐに
……………………….。
……………………….。
……………………….。
……………………….。
ふぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜(雄大に白目をむく)
“ここではないどこか”へ連れて行ってくれるのがいつもの推しなら、推し(プレミアム)はそのスケールが2倍になっただけでなく、ささやかな“ご機嫌”をも連れてきてくれる。しかも量が割とある。なくなったと思わせて実は隅っこにまだいくつか残っていた時の嬉しさは、エンドクレジットの後にボーナス映像が盛り込まれた映画のようなお得感だ。
これまでの推しは食べ慣れているだけあって安心できていい、しかれども推し(プレミアム)はその味わいも深く濃密で、官能的に心を震わせてくるのだ。“果汁2段仕込み・品種別に3種類の味が楽しめる推し(プレミアム)”は、上質で特別感があり、「こんな平凡で面白みのない人生っ…!」と自虐の止まらない私を優しく包み込んで、「君の人生、思ってるより悪くない…むしろ思ってる以上に…プレミアムなものだよ。よく頑張ってるね、えらいね…」とさりげなく背中をさすって褒めてくれるのだ。薄情なお前でも泣けるストーリーではないか!
そう、推し(プレミアム)は毎日を頑張る私への、新しいご褒美だ。
社会人10年目を超え、自分にあげるご褒美の額もだいぶ上がってきた。
この間は【就業中に転職サイトを漁っているのを上司に目撃され呼び出しをくらったが、「職場で嫌なことがあるなら言ってね」と逆に励まされてしまい凹んだ】ので、“凝った刺繍のワンピース¥45,000”をご褒美に買った。
先月も【プレゼン用パワポ資料の順番を間違えて作成し、同僚はおろか取引先のやたら偉い人をもヒヤヒヤさせたのに誰一人怒らず、「そんなこともあるよ!元気出して!」と逆に気遣われてしまい凹んだ】ので、“歯がなくても食べられる肉¥25,000”をご褒美として(一人で)食いに行った。
このままではご褒美代だけで車が買え、果ては家が建ってしまう…と心中穏やかでなかったのは紛れもない事実だ。
推し(プレミアム)は、そんな金遣いが異常な私を、フェンスに引っ掛け一度の着用でダメにした刺繍ワンピの、実に225分の1の価格で癒し、労い、是正してくれたのである。やっぱりとんでもないコスパの良さ、リピ確定のひとり勝ちである。
ままならない人生、されど明日も生きて行かねばならない人生ならば、ライフラインの一つとして推し(プレミアム)の携帯を強くお勧めする。どんな時も聖人君子でいられるのが理想ではあるが、そんなものは推しの来ない回転寿司をただひたすら笑顔で見送ることよりも難しく、不可能だ。億万長者でスーパーモデルの成人を除けば、誰しもがどこかの何かには所属しているだろうし、そこには“お茶の濃さにやたらこだわる上司”や“報連相(ホウレンソウ)って食べれるんすか?と食いかかってくる部下”、“保険と住宅ローンの話しかしない同僚”だっているだろうから、ちゃぶ台の一つや二つひっくり返したくもなるだろう。
だからこその推し(プレミアム)だ。“ここではないどこか”へ連れて行き、ささやかな“ご機嫌”を連れてくる。平凡で面白みのない人生に加わる優しいエッセンスが思い出させてくれる、貴方の人生の尊さとプレミアムさ。
荒ぶる気持ちが鎮火され、ご機嫌をもたらされた貴方は、それだから玉露を茶葉のまま出したり、ほうれん草を無理やり口に突っ込んだり、マウントを取り返して自分が持ち家(ローン無し)に住んでいることなどおくびにも出さなくなるはずだ。
社会人2年目の冬、“ここではないどこか”へ旅立った先輩もまた、理想郷が自分の足元にあり、どんな人生も心持ち次第で変わることに気が付いただろう。
そんな先輩の手元には、きっと【つぶグミ・Premium(プレミアム)】が置いてあるに違いない。
この記事で使われた商品
- 一粒ずつ、じっくりフルーツを味わえるつぶグミ
本格的で濃厚なおいしさを追求した個性豊かな3種の梨(幸水、二十世紀梨、ラ・フランス)。じっくりと味わう上質なひと時を楽しめるつぶグミです。
yan(やん)
都内某所に生息。主に酸素を吸いながら、だいたい二酸化炭素を吐いています。
平均的な会社員として満員電車に乗る傍ら、イラスト・絵本・コラムを夜な夜な作ってはほくそ笑んでおります。床に落ちた食べ物は30分以内なら食べます。