タイトル:ジャムパンとクリームパン
山に棲んでいた僕は、一人で買い物することに憧れ、やっと小学校入学直前、母からいわれて麓までパンを買いにいきました。ドキドキしながら、「ひとつだけ買っていいよ」といわれた菓子パンを、残りひとつずつになったジャムパンかクリームパンかに迷い、ジャムパンに決めたときです。
「ジャムパンください」
おばあさんの声。
「最後のひとつ。よかったですね」
店主が微笑みました。
「グワァァ!」
僕の大きな声。
おばあさんと店主は、驚いて僕を見ました。
「ひとりでお買い物、えらいね」
おばあさんは、僕の頭をグリグリ。
号泣に変わる僕の声。おばあさんは、ジャムパンが原因だとやっとわかりました。
僕は、クリームパンを買って店を出ます。おばあさんが立っています。
「半分こ」
ジャムパンをちぎって半分くれました。
「また遊びにおいで」
農家を指さし去りました。
ジャムパン、僕のが、かなり大きかった。
絵本作家のまるやまさんより
他の方のお話を絵本にするのは初めてだったのですが、
とても微笑ましく楽しいお話で絵本を描かしてもらうのが楽しみでした。
当選者の方からさらに詳しいお話でパンを選ぶ時の心境やおばあさんについてお聞きして
さらにこのエピソードをたくさんの人に読んでもらいたいと思いました。
大人の方も子供の頃を思い出しながら一生懸命だから感情豊かなそうすけ君とクリームパンを全部じゃなくて”大きな半分”をあげる粋なおばあさんの優しさにふれてもらえると嬉しいです。
原作者 脇本harukuさんの受賞コメント
幼いころの原初体験に近い思い出を手繰って書きました。
TV番組「はじめてのおつかい」を観るたびに、よみがえっていたエピソードです。
まるやま先生のイラストのおかげで、おばあさんと再会できた気分です。
絵本になって、当時のノスタルジーに、じんわり浸ることができました。
そういえば、クリームパン、しばらく食べてないな~。
まるやま先生、心からありがとうございます!